ふたり
きみとぼくが、ふたりになる前のずっと前。ぼくはひとり、大きな海原を泳ぎつづけ
ていた。きみは砂漠を、ひとりで彷徨っていた。
むこうの方に大きなオアシスを見つけたきみは、駆け出すと同時につまずいて転
んでしまった。転んだとき、金色の砂が空中に舞いあがった。ぼくは、海の中にど
んどん沈みながら、金色の泡が上へ上へ、のぼっていくのを見ていた。
とてもとても長い時間が経って、ぼくがやっと今のぼくになる頃。
まもなく、きみに出会い、ふたりになることを知らされた。知らされたのにも関わら
ず、なんだか大きな光に包まれて、その次に気づいた時にはすっかりそのことを
忘れてしまった。
忘れたふたりは、忘れたまま、目の前に姿をあらわして挨拶をする。はじめて手
に触れる。はじめて髪に触れる。ある時、きみは不思議な顔をして言った。
「いま何か思い出しかけた」
思い出しかけたっていうのは、はんぶん寝てたっていうのと同じで、うっかりすると
起こるものだね。きみは、いつもうっかりしてるから、大体思い出しっぱなしの垂れ
流しだね。
ぼくの答えが気に入らなかったきみは、それなりに本気の力で、ぼくの尻を蹴飛
ばした。